ジョン→マナナは死んだ我が子をくわえ巣穴から離れた場所に運んでいきました。

そして思いがけない行動をとったのです。
それは私がマナナと過ごした17年のうち最も心を揺さぶられた場面のひとつでした。

マナナは我が子の亡骸を食べ始めたのです。
そうすることで死んでしまった我が子を弔っていたのだと私は信じています。

それから4日間も彼女は死んだ我が子を呼び続けていました・・・。
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死んでしまったマナナの子ども(生後まもなくの頃)

ジョン→そのようなマナナにカメラを向けるのはつらい事でした。
胸を切り引かれるような思いをしました。

しかし子供を亡くすことは全てのヒョウに突き付けられる運命です。
マナナが生んだ8匹の子どもの内、無事大人になったのは4匹だけです。
マナナはいつまでも嘆いてはいられません。
生きていかなければならないのです。
そのためには狩りをしなければなりません。



高さ15mの木の上で彼女はなにか獲物になりそうなものはないか目を凝らします。
群れから離れた1匹のインパラにマナナは狙いを定めました。
すべてはタイミングにかかっています。
やすやすとしとめているように見えますが飛び降りながらの攻撃は滅多に見られません。
条件が揃う必要があるからです。
獲物との距離、飛び降りるタイミング、正確な動き、マナナは完璧でした。
一刻も早く獲物を地面から引き上げねばなりません。
しかし、木の上も常に安全とは限りません。


近くにライオンがいます。
ここアフリカではヒョウの最大の敵です。
ライオンはヒョウの3倍も体が大きく、ハイエナと違って木に登ることができます。
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マナナの祖母はライオンに襲われて死にました。
マナナもまた同じような窮地に立たされています。
マナナは獲物を置いて出来るだけ高い場所に避難しました。
獲物を守ろうとするのは自殺行為です。
ライオンたちに横取りされるのを黙って見ているしかありません。

更に別のライオンもやってきました。
数が多くなると状況は変わってきます。
腹をすかせた群れが1片の肉をめぐって争い始めました。

逃げるなら今です!

ライオンたちが争いに気を取られている隙に、マナナはその場を離れました。
狩りはやり直しです。


ひとつのチャンスを失った後に別のチャンスがやってきました。
チーターが狩りをしています。
チーターとヒョウは体の大きさは互角ですが狩りの仕方はそれぞれ全く異なります。

こちらがチーター。
チーター


流線型の体と自足100㎞の走りが自慢です。
(女性の体みたいですね)


一方ヒョウは忍び足と強靭な一撃を強みとしています。
チーターの獲物を奪い取ることができるかもしれません。

獲物を食べているチーターに忍び寄るマナナ。
マナナに威圧されチーターは去っていきます。
ヒョウは勝てる戦いしか仕掛けません。

ただし例外が1つあります。

それは縄張りをめぐる争いです。
雌のヒョウは獲物、住処、巣穴をめくって死ぬまで戦う事があります。
マナナは最盛期には恐るべき戦士でした。

彼女はこのあたりの最も良い場所を縄張りとしていました。
しかしその場所を維持するには頻繁に戦わなければなりません。
ひどい傷を追う危険もあります。
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心配そうにカメラを通してマナナを見つめるジョン。

 年月が経つにつれてマナナはそうした傷が堪えるようになってきました。
今や彼女は16才の老いたヒョウです。
大抵の野生のヒョウより4年以上長く生きています。

もうかつてのように激しく戦うことはできません。
若いメスがマナナの近くを平気で歩き回っています。
自分の臭いをつけ1番いい場所を横取りしようとしているのです。

マナナはそれをただ見ているしかありません。


 聞き慣れた唸り声。

ハイエナたちが何かの獲物を奪おうとしているのでしょう。
年老いたマナナはハイエナたちのおこぼれにありつき生き延びる足しにしています。
いつものようにハイエナたちはエサをめぐって激しく争っています。

ジョン→マナナは自力で狩りをすることが難しくなり、こうやっておこぼれをもらうことが多くなりました。

 隙を見てバラバラに恥った肉の一切れをくわえ素早く木に飛び上がる作戦です。
しかしハイエナがたくさんいるうちはそれも無理でしょう。
それはマナナにとってあまりにきけんな綱渡りです。
肉を奪えば確かに生き延びられますが、ハイエナたちは容赦なく攻撃してくるに違いありません。

結局マナナはどうする事もできませんでした。

ハイエナたちが去った後マナナは骨一つでも小さな肉のかけらでもないかと探し続けていました。
しかし残っているのは小さなな骨と血だけでした。
大した食事にはなりません。


 更に6ヶ月が経過しました。マナナはもうすぐ17才です。
ジョンは定期的にマナナの様子を見に通っています。
マナナは木の上からなにかを見つめていました。
今のマナナはどんな小さなものでも捕まえられるものなら何でも食べます。

ジョン→若い頃とても敏速で強かったマナナですが17才が近づいた今小さな獲物を捕まえるしかないと自分でもわかっているのでしょう。

今日、彼女はオオトカゲを捕まえました。
生き延びるために今も持てる力の全てを使っています。彼女はもう長くはないでしょう。

ジョンhはマナナのそばに座ろうと思いました。おそらくこれが最後のチャンスです。

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ゴロンと横たわるマナナ、嬉しそうなジョン

ジョン→「よーし、いい子だ」

あと数週間でマナナは17歳になります。人間の85歳に相当する。野生のヒョウとしては記録的な年齢です。

ジョンが口で出す音はマナナが子どもをあやす時の音に似ています。

ジョンは何度もマナナに、マナナの鳴き声の真似をしながら「いい子だね」と語りかけます。

ジョンはマナナを恐れずマナナもジョンを恐れません。

そこには確かな信頼の絆があるのです。

野生のヒョウのそばに人間が横たわるなど、普通ではありえないことです。
しかし、ジョンにはそれがマナナと過ごす残り少ない時間だとわかっていました。
まもなくジョンがとこにもマナナを見つけられない日がやってきました。
ジョンは悟りました。

ジョン→マナナは逝ってしまったのだと。ロンドロジ保護区の薮に行く度、木々の周りを調べ、どこかにマナナはいないかと思うんです。

しかしあの素晴らしいヒョウはもうこの世にはいません。マナナとの絆を深めた17年間は私にとって特別なものでした。
幼い彼女の目を見つめたあの最初の瞬間から彼女の死を悟った最後のその日まで・・・。


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  幼い日のかわいいマナナ

マナナ、ありがとう。(終わり)


         



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